新鮮な獣や鳥の肉・魚肉を切り取って生のまま食べることは人類の歴史とともに始まったと言ってよいが、人類の住むそれぞれの環境に応じて、生食の習慣は或いは残り、或いは廃れていった。
日本は四方を海に囲まれ、新鮮な魚介類をいつでも手に入れられるという恵まれた環境にあった為、生食の習慣が残った。即ち「なます(漢字では「膾」)」である。
なますは新鮮な魚肉や獣肉を細切りにして調味料を合わせたもので、文献上は古代中国の膾が先行するので、中国から日本に伝わったという可能性もあるが、原始的な料理だけに、独自に発生、発達したと見るのが自然である。
なますの語源は不明であるが、「なましし(生肉)」「なますき(生切)」が転じたという説がある。
一般には「生酢」と解されているが、それは調味料としてもっぱら酢を使用するようになったことによる付会の説であり、古くは調味料は必ずしも酢とは限らなかった。この伝統的ななますが発展したものが刺身である。